長生橋の棟梁・川崎甚蔵と『臥龍橋之圖』|長生橋関係資料集

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長生橋関係資料集

長生橋の棟梁・川崎甚蔵|越後国古志郡長岡 臥龍橋之圖

信濃川に架かる長岡市のシンボル「長生橋」は、明治9年に完成した初代以来、現在で三代目となります。

明治9年に完成した初代長生橋は、中州を挟んで大橋、中橋と中洲にある小橋からなる長生之三橋と称されました。

また、その形が龍が横たわっているように見えたことから『臥龍橋』とも言われていました。

『臥龍橋』は、広江椿在門が設計し、施工を担ったのが西蒲原郡岩室村和納の棟梁 川崎甚蔵(かわさきじんぞう)でした。

その見事な構造は当時の常識を覆すもので当時の人々を驚かせたと伝えられています。

当時の『越後国古志郡長岡 臥龍橋之圖』の原文と、長生橋関係資料集(吉野利夫)による現代語訳をご案内します。

 

越後国古志郡長岡 臥龍橋之圖(原文)

以下は、越後国古志郡長岡 臥龍橋之圖の原文を(なるべく)そのまま掲載しています

文明開花ノアリガタキ諸芸術トモ日々月々維レ新タ二古ヨリ未曾有
人ノ耳目ヲ驚カス事 アゲテ数フベカラズ 茲二越後国長岡草生津ノ渡リハ
長サ四百六十間ノ大川ニテ 大水ノセツハ 木石ヲ流シ又ハ雪消ノ研  堅キ氷
激流シ 通船六ケ敷 人々渡リニ苦シム事シバシナリ 明治8年10月8日
同国蒲原郡第三大区小二区 和納村川崎甚蔵卜云人宮許ヲ得 橋ヲ架ス
其工夫 世人ノ意外二出ズ 観ル者驚カザルハナシ 本月末旬成功卜聞キ
人々ノヨロコビ 紙上二畫ガタシ 我等モ雀躍二不堪拙文ヲ綴り 世上ノ未タ
知ラザル者アランカト 書画ニシテ遍ク 之レヲ告グ 或ル藝妓 大津画節ノ
ー曲ヲ作リテ 渡り初ヲ賀ス併セ録ス

唱歌ニ
ヲヽエ ヲヽ卜呼トイエド 聲モトドカヌ大渡り 今度来テ見テビックリ
仰天ス ソレハナンダト申スナラ 川崎サンガエ夫ニテ 長サ四百間余ノ
橋ヲカケタ ヤレヤレ希代ナ仕業ナリ 感ジ入ル何ノ苦モナク 出来上リ
往キ来二便利ヂヤト 人々ヨロコビ 渡り初メ

明治九丙子年二月

越後国古志郡長岡
臥龍橋之圖
長四百二十七間
横三間三尺

越後国古志郡長岡 臥龍橋之圖

引用:長生橋関係資料集

越後国古志郡長岡 臥龍橋之圖(現代語訳)

以下は『長生橋関係資料集』(吉野利夫)による現代語訳です。

人知が開け、世の中が進歩する事は有難く、学芸・技術それぞれが、日々月々に新しくなり、古くから今までに、こんなに人々を驚かした事は一度もなかった。

此処、新潟県長岡の草生津の渡しは、川幅 836.28Mの 大河で、大水の時は木や土石を流し又春雪解けの時は、堅い雪の固まりが激しく流れ、六隻の渡し船と人々は渡るに苦しむ事が度々あつたが、明治8年10月8日 (長岡の歴史・野鳥出版 明治9年4月30日に出金割合を定め工事譜け 負い人とある)

新潟県西蒲原郡岩室村和納の棟梁川崎甚蔵は国の許可を得て、橋を架けるその工夫は、世の人の常識を越え、観て驚かない人はなく、今月下旬に完成すると聞き人々のその喜びを、紙面に書き尽くし難いが、我々もお喋りに未熟な不味い伎章を綴り、世間でまだ知らない人の為に、書画にしてくまなくこれを伝え、ある芸妓は大津絵節の一唄を作り、渡り初めを祝う、それも併せ書きしるす。

唱歌 (頌歌 その人の功績徳望を褒め讚える歌)

おおい、おおいと呼べども、声も届かぬ大きな渡し、この度来て観て驚いた
それは何だと云えば、川崎さんが思案して、長さ四百間余りの橋を架けた
それはそれは、希な所業で感心す、何の苦労もなく出来上がり、
往き来に便利だと人々は喜び渡り初め。

(文責 吉野利夫)
(引用:長生橋関係資料集)

椿在門架橋の大橋写真

広江椿在門架橋の大橋 明治9年10月20日完成 長岡より西岸深才方面を望む

  • 大橋 230間 幅3問2尺
  • 小橋 48間 幅2問
  • 述べ505.45M
  • 総工費11,552円79銭2厘

川崎甚蔵が手がけた臥龍橋は、単なる架橋ではなく、明治初期の信濃川を越えるという長岡の夢を形にしたものでした。

廣江椿在門とともに長生橋の原点を築いた川崎甚蔵の技術と情熱が、これからも長岡のまちの記憶に静かに息づき続けてほしいと思います。

(画像引用:長生橋関係資料集)

出典・参考文献

・吉野利夫『長生橋関係資料集』(平成8年)

『長生橋関係資料集』のアーカイブ

長生橋の歴史・変遷について収集した唯一のドキュメントが長生橋関係資料集(平成8年8月)です。

長生橋関係資料集は「長生橋の中の人」である元長岡土木事務所の吉野利夫氏が、初代の長生橋から現在まで新聞・各文献より長生橋の情報を収集した知る人ぞ知る資料集です。

この『長生橋関係資料集』を吉野氏御本人から提供していただき長岡花火ドットコムで公開しています。

長生橋と同じように、このアーカイブも人と未来をつなぐ存在になりますように。

 

 

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