上越線全通記念博覧会の絵葉書コレクション

上越線全通記念博覧会の絵葉書コレクション
新潟・長岡のアーカイブ

上越線全通記念博覧会の絵葉書コレクションと解説

昭和6年に長岡市が主催して開催された「上越線全通記念榑覧曾

上越線全通記念榑覧会は群馬県の高崎駅から新潟県の宮内駅までの区間が1931年(昭和6年)9月1日に全開通したことを記念して開催されました。

上越線全通記念博覧会は、敷地面積 23,000坪(東京ドーム約 6個弱) に5,870坪の主建築と2,718のブースが出典されました。

今では博覧会の名残をとどめるものは少ないですが、主建築を絵葉書にデザインした「上越線全通記念榑覧曾繪葉書」から当時の雰囲気をご案内します。

上越線全通記念博覧会繪葉書(長岡市立図書館所蔵)

上越線全通記念博覧会の主建築

上越線全通記念博覧会の正門

会場の正門は商業学校通りと浄水場通りにまたがり、一文字型に両翼を広げて建てられた。木造で、総面積はおよそ95坪。軒の高さは約10メートル、全幅はおよそ50メートルに達した。

屋根は平らな陸屋根で、鉄板葺き。外壁はすべて白い漆喰で仕上げられていた。正面の大きな入口は幅約9メートルあり、団体客のために両脇にも出入口が設けられ、右側は会期中、出口専用とされた。

正面上部は白地に黒の市松模様があしらわれ、その中央上方には本会の六角形マークが掲げられ、中央には「上越線全通記念博覧会」という十一文字が角ばった黒い文字で浮き彫りにされていた。

腰壁の張り出し部分には緑の木々が植え込まれ、清らかな印象を与えていた。正面の白壁には大きな丸窓があり、両袖部分にも三つずつ丸窓が並び、不透明な青いガラスに十文字格子が施されて、白い壁との美しい対比をなしていた。

張り出した両翼には円柱が並び、回廊のような造りとなっていた。正面入口の内側の天井には金色の六角形のシャンデリアが五基吊るされ、半月形のモダンな窓を設けて観覧券売場とした。

両翼の内部には経理部、救護所、守衛詰所、警察官詰所が設けられ、その外観は雄大で品格があり、簡素で清らかな美しさを備えていた。本博覧会の意義を象徴する独自の新しい様式が採用されており、夜間には複数の投光器によってライトアップされた。

(出典:長岡市主催上越線全通記念博覧会誌)

上越線全通記念博覧会 絵葉書「正門」

 

長岡出品本館

長岡出品館は、北側に建つ出品本館と向かい合うように、会場の南端に建設された。

外壁は淡い卵色に仕上げられ、中央には高さ約21メートル(七十尺)の高い塔がそびえ、三か所に大きな玄関が設けられていました。

建築様式はスパニッシュスタイル(スペイン風)を基調としながら、そこにやや東洋的な趣を加えた独自の新しい様式で構成されて塔や屋根の上縁にはブロンズ色の立体模様が施され、塔の頂部にはブロンズ色の唐草模様の浮き彫りをあしらった球状の装飾柱が据えられていた。

その荘厳な色彩と、精巧に設計された建築構成が見事に調和し、会場内でもひときわ優れた建物のひとつとして人々の目を引きました。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「長岡出品館」

國防館海軍塔

国防館は、浄水場の高台にある出品本館に隣接して建てられ、その平面はややいびつな形をしていた。建物は西側が陸軍館、東側が海軍館となっていた。

陸軍館は木造平屋建てで、軒の高さ約6メートル、延べ面積約40坪。外壁は黄漆喰(きしっくい)で仕上げられ、上部には銃眼(銃を構えるための小窓)や人工的な外郭を設けて城塞(じょうさい)風に造られていた。正面上部には陸軍のマークが掲げられ、重厚で威厳のある外観だった。

海軍館は陸軍館とほぼ同じ構造で、建坪は約80坪。外壁は淡い水色の漆喰で仕上げられ、上部の壁は外側に反らせ、丸窓を並べて軍艦を思わせるデザインとした。破風(屋根の端の装飾部)には錨(いかり)のマークが付けられ、海の防衛を象徴していた。

陸軍館と海軍館の間には、幅約13メートル・建坪約20坪の大玄関が設けられていた。そのパラペット(屋根の縁部分)には、日本列島を真紅で描いた「国防世界地図」が漆喰で浮き彫りにされており、広い構造と両側にそびえる巨大な円柱が、日本の国防力を象徴するように堂々と会場全体を圧倒していた。

さらに、海軍塔が国防館の前方に建てられ、地面から塔の頂までの高さは約27メートル(九十尺)に達した。これは軍艦のマスト(帆柱)を模したもので、鉄骨構造により堅固に組み上げられ、地下3メートルまでコンクリート基礎が打たれていた。塔の頂からは何十本ものロープが張り巡らされ、万国旗で飾られ、会場内で最も高い塔として、正面入口からもひときわ目立つ存在感を放っていた。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「國防館海軍塔」

鉄道記念館

鉄道記念館は、長岡出品館の西隣に建てられ、延べ面積およそ150坪の木造掘立建築。

建物の高さはパラペット(屋根の縁の立ち上がり部分)の上端まで約7メートル。屋根は30番の生子板(波型の鉄板)葺きで、錆止めペンキが塗られていた。外壁は内側に葭簀(よしず)を張り、その外側を白い漆喰で仕上げ、床は三州産の三和土(たたき土)で仕上げられていた。

この建物は上越線全通を記念して建てられたものであり、設計には特に工夫が凝らされていた。一見すると簡素に見えるが、当時としては最先端の構成派風(モダンデザイン)の建築であり、博覧会場の中でも「最もモダンな建物」と称された特徴的な展示館だった。

出入口は建物の両端にそれぞれ設けられ、東側の入口上部には丸い枠窓が三つ横に並び、西側の端には丸窓が六つ、縦に二列配置されていた。さらに建物中央には横長の大きな窓が設けられ、西側入口の上には円盤形の装飾が掲げられ、全体の調和を損なわない程度に控えめな装飾が施されていた。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「鉄道館」

引用:長岡市主催上越線全通記念博覧会誌

上越線全通記念博覧会 絵葉書「名古屋特設館」

餘興舘

マヂックアイランド舘

「魔法の国」とも呼ばれたこの建物は、健康館の門に隣接して建てられた。木造平屋建て、延べ面積は約204坪半、掘立造で、軒の高さはおよそ4メートルほどあった。

内部・外壁ともに板張りで、正面は大きな円形を描き、クリーム色の漆喰で仕上げられていた。そこに彩色された浮き彫りが施され、両側にはエジプト風の人物像が並び立っていた。

入口のまわりには、名も知らぬ巨大な花が描かれ、正面上部には無邪気な表情の大きな目が二つ並んでいた。中央の三角模様と入口の空洞を組み合わせることで、建物全体が一つの「顔」に見えるようデザインされていた。

このように外観からしてエジプト趣味が強く表現されており、内部装飾とも調和していたことから、会場内で最も人々を楽しませた建物の一つと評判になった。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「マヂックアイランドと奈良館」

野外ステージ

野外ステージは、鉄道記念館の前方に建設された。木造掘立造で、地上からの高さは約6.7メートル。外壁は淡い卵色のプラスター(漆喰)仕上げで、建坪はおよそ25坪半。

舞台部分は約10坪ほどで、間口は約16メートルあった。正面および平面の構造は、大きなアーチを交差させることで音響効果を考慮した合理的な設計となっていた。

両脇には大きな植木鉢が二つ置かれ、舞台の両端には二か所の階段が設けられており、出演者の昇降がしやすいよう工夫されていた。

舞台前には五人掛けのベンチが50台余り並べられ、観覧席として整備されていた。舞台裏は控室やホールなどに区分され、出演者の準備や待機に使われた。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「野外ステージ」

 

特設館

演芸館

演芸館は、協賛会の施設として、商業学校グラウンドの北東隅に本会(博覧会)の設計で建設された。

その建物は壮麗で雄大、従来の博覧会演芸館には類を見ない規模で、遠くから眺めると巨大な鯨が横たわっているように見えた。その姿はどこへ出しても恥ずかしくない堂々たる大建築であった。

建物の概要を述べると、木造平屋建てで延べ面積はおよそ440坪半。軒の高さは約8メートル、屋根の頂までの高さは約13メートル。屋根は「腰折れ屋根」と呼ばれる形状で、切妻式の亜鉛引き波鉄板葺きにペンキ塗装が施され、外壁は全体を淡い卵色のプラスター(漆喰)仕上げとした。

正面の大玄関は開口幅およそ16メートル(九間)で奥行きは約6.3メートル(三間半)。建築様式はおおむねスパニッシュスタイル(スペイン風)を基調としており、左右に切符売場、事務室、喫煙室を配置し、大きな出入口を三か所に設けていた。

内部構造の最大の特徴は、当時としては例を見ない両面舞台(りょうめんぶたい)構造であったこと。
北側のA舞台は桃山風の純日本式で、間口約16メートル。左右には雛段式の花道が延び、銀の襖をはめ込んだ数寄屋風の庇が吊るされ、花道下には出演者用の地下通路が設けられていた。

対する南側のB舞台は特別興行用として、幅約11メートルの直線アーチ形をした純洋風の意匠で、舞台は三段構成となっていた。

観覧室の内壁は色漆喰で仕上げ、長押(なげし)をつけた折り上げ格天井(ごうてんじょう)とし、観覧席はおよそ900名を収容。床は打ち込み脚の板張りで、青いモス(布地)で覆われていた。
各舞台の裏には楽屋、化粧室、浴室などの付帯設備が整い、舞台装置と音響設計は非常に巧みであった。

その音響の良さと美しい舞台背景が相まって、観客を魅了する演出効果は抜群であり、900席を備えながらも常に満席となるほどの人気を誇った。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「演藝館」

朝鮮館

朝鮮館は、国防館の東南に隣接して建てられた。

木造平屋建てで、延べ面積はおよそ80坪。高さ約1.5メートルの石造りの基壇の上に高く建てられていた。建物全体は朝鮮風の宮殿を模しており、柱は朱塗り、屋根は入母屋造(いりもやづくり)で、亜鉛引き鉄板葺きに緑色のペンキが塗られていた。四隅には風鈴が吊るされ、外壁全体には極彩色の装飾が施されていた。

内部は板張りの床で、天井も極彩色の格天井(ごうてんじょう)とされ、中央には八弁の梨の花を中心にした朝鮮模様が描かれており、その華やかさは目を奪うほどだった。天井の中央からは瓔珞(ようらく)を下げた天蓋が吊るされ、柱や鴨居(かもい)に至るまで、紅・紫・赤・黄といった鮮やかな色彩が施され、異国的な雰囲気を強く放っていた。

ただし、垂木(たるき)などの構造部材はすべて本物の木材ではなく、五本に一本ほどが木材で、他は丸めた紙玉に絵紙を張って形を作るという軽量化工法で造られていた。こうした演出的なつくりは、まさに博覧会建築の美意識を遺憾なく発揮したものだった。

この建物は、市外の業者が請け負った唯一のもので、金沢市の八日市屋氏によって施工された。建設費用は本会(博覧会主催者)によって支出されたが、そのうち1000円は朝鮮総督府からの補助金で賄われた。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「朝鮮特設館」

臺灣館

台湾館は木造の掘立造で二階建て。

博覧会の最も中央部に張り出した好位置に建てらました。

五角形の池の北西角近く、水面を望む場所にあり、建坪は約50坪。軒の高さはおよそ7メートル、屋根は平らな鉄板葺きでペンキ塗装、外壁は赤茶色の漆喰で仕上げられていた。

1階の展示室は、床がセメントタイル張り、天井は布張り、側壁は紙貼りとされ、背面を除く三方に出入口が設けられていた。2階は喫茶室で、床は板張りの上にズック布(厚布)が敷かれ、壁は紙貼り、天井は布で覆われていた。テラス部分には防水処理が施され、屋外の眺望も楽しめる造りとなっていた。

建物全体の構造、屋根の反り、色彩などはすべて台湾風を模しており、その丹碧棟奐(たんぺきとうかん)――つまり、赤や碧を基調とした華やかな色彩美が池の水面に映り、来場者の目を惹いた。

建設費のうち、総額の半分にあたる1,245円は台湾総督府から補助金として支給された。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「台湾館」

北海道特設館

北海道館は北海道庁の設計によるもので、博覧会本部から監督を委嘱され、朝鮮館の南隣に建設された。

木造の平屋建てで、延べ面積は約82坪半。白亜の四角い正面に、約15メートル(五十尺)の高塔が釣り合いよくそびえ、塔の頂には庁旗が川風に翻っていた。塔の中央と本館の左側外壁には「北海道館」という日本文字が浮き彫りにされ、右側外壁にはローマ字表記が浮き出していた。

外壁は漆喰のスタッコ仕上げ、屋根は亜鉛引き鉄板葺き。

内部は三州叩き(たたき土)の天井で、内壁も漆喰で仕上げられていた。建物の敷地は高台にあり、正面に高塔を配したその構成は、特別な装飾を施さなくとも全体がよくまとまり、非常に美しい外観を呈していた。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「上越線全通記念博覧会 絵葉書「正門」」

中央噴水塔

中央噴水塔は、博覧会場の中心、大池の真ん中に建てられた。

池の水面から塔の最上部までの高さは約10メートル(33尺2寸)であった。台座部分は円形で、直径約4メートル(13尺)。最下段には六つの花鉢が配置され、水草が植えられていた。

中段には等身大の小さな人物像が六体、塔の胴部を取り囲むように立ち、その頭上の周囲にはガラス球が配され、複数の噴水が交差して立ち上る動的な水の造形を形づくっていた。

中央部には力強い印象の六角柱が立ち上がり、七段構成となっていた。そこから六方向に向けて数十本の噴水が放たれ、塔の頂上部からはさらに約9メートル(30尺)もの高さに達する中央の噴水が勢いよく吹き上がっていた。

その雄大で荘麗な姿、そして豊かな涼感は比類なく、会場第一の見どころとして来場者を驚かせた。
夜間には照明装置が施され、光と噴水の霧が交錯して水面に反射し、幻想的な美しさを演出していた。この噴水塔は、生命保険協会からの寄付によって建設されたものである。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「中央噴水塔」

迎賓館

迎賓館は、正門を入って正面、大池を隔てた対岸の水辺に建てられた。

建物の面積は約12坪半。屋根は瓦棒付きの亜鉛引き鉄板葺きで、湿色(しめりいろ、落ち着いた灰緑系)のペンキで仕上げられていた。外壁は淡い卵色の漆喰塗りで、内部の天井や内壁も同じく漆喰で仕上げられ、床にはリノリウム(防水性の床材)が敷かれていた。

建物全体は、やや東洋的な趣を取り入れた端正な構えで、ベランダやテラスを備え、博覧会関係者の来賓接待に用いられた。なお、この建物は博覧会の建築工事を請け負った業者からの寄付によるものであり、博覧会本部は設計のみを担当した。

上越線全通記念博覧会 絵葉書「迎賓館」

名古屋特設館及國産發明館

上越線全通記念博覧会 絵葉書「名古屋特設館及國産發明館」

 

全景

会場全景

上越線全通記念博覧会 絵葉書「会場全景」

本館全景

上越線全通記念博覧会 絵葉書「本館全景」

アーチ

常盤町博覧會正門通りのアーチ

上越線全通記念博覧会 絵葉書「常盤町博覧會正門通りのアーチ」

長岡第一本町四ツ角の大アーチ

上越線全通記念博覧会 絵葉書「長岡第一本町四ツ角の大アーチ」

出典

  • 上越線全通記念博覧会繪葉書(長岡市立図書館 所蔵)
  • 長岡市主催上越線全通記念博覧会誌(NDLデジタル)
  • 小竹コレクション(柏崎市立図書館 所蔵)

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上越線全通記念博覧会の長岡花火

上越線全通記念博覧会の余興として、すでに一大名物になっていた長岡花火が鮮やかに大会を彩りました。

初めて打ち上げられたひるの三尺玉には数百の風船が空中に空に放たれて、夜の仕掛花火と共に大いに好評だったそうです。

 

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